アームがクアルコムとのライセンス契約を打ち切ると発表し、両社の対立が表面化した。アームはクアルコムが契約を繰り返し違反したと主張し、これ以上の違反を防ぐための措置と説明する。これに対してクアルコムは、アームの行為を反競争的で根拠のない脅迫だと批判している。

クアルコムが買収したNuvia関連の設計が焦点となっており、12月に予定される裁判が業界全体に与える影響が注目される。両社の対立は、次世代のSnapdragon製品の供給にも波及する可能性があり、緊張感が高まっている。

アーム、クアルコムとのライセンス契約を打ち切り

アームは、クアルコムとの間で締結されていたアーキテクチャライセンス契約(ALA)を正式に終了させた。これにより、クアルコムはArmの指示セットアーキテクチャ(ISA)を基盤とする新たなカスタムチップの設計が困難になる見込みである。

アームの声明によると、同社は「30年以上にわたるエコシステムの保護」のためにこの措置が不可欠であるとし、クアルコムが重大な契約違反を繰り返したため、このような決断を余儀なくされたとしている。アームはクアルコムに対し、60日以内に契約違反の是正を求めており、応じなければクアルコムはSnapdragon X Eliteプロセッサなど、Nuviaの技術を用いた製品の販売が停止される可能性があると警告している。これにより、今後の製品ラインナップに影響が及ぶことが懸念されている。

クアルコムの主張:アームによる「脅迫」と「妨害」

一方で、クアルコムはアームの決定に強く反発している。同社は、アームがNuvia買収後の契約条件の再交渉に応じず、既存のライセンスがNuviaの設計を網羅するはずだと主張している。また、クアルコムはアームの行為を「パートナーに対する脅迫行為」とみなし、同社の製品性能を妨害しようとする意図があると非難している。

特に、アームがこのタイミングで契約終了を決断した背景には、特許使用料の引き上げや市場シェアの拡大を狙った思惑があると見られている。クアルコムは、12月に予定される裁判で自社の正当性が証明されると自信を見せ、アームの反競争的行為を容認しない姿勢を強調している。

裁判は12月に開始、契約違反の是正か終了か

アームとクアルコムの法廷闘争は、12月に裁判が開始される予定である。この裁判の焦点は、クアルコムがアームの契約違反の指摘に応じるか、それともNuviaの技術を活かした製品群が市場から撤退するかにかかっている。

アームは、クアルコムが適切な是正措置を取らない場合、契約終了を求めると同時に、すでに市場に出回っているNuviaの設計を破棄するよう要求している。これに対してクアルコムは、Nuviaの設計を含む既存のライセンス契約は有効であり、アームの要求は無効であると反論している。裁判の結果次第で、両社の今後の戦略やパートナーシップに重大な影響を与えることが予想されている。

スナップドラゴン製品への影響も懸念

今回の対立が長引けば、クアルコムの主力製品であるSnapdragonシリーズへの影響が避けられないと見られている。Snapdragon X Eliteなど、Nuviaの技術を取り入れた最新のプロセッサがその対象となり、販売の停止や市場からの撤退が強いられる可能性があるためである。

また、クアルコムはArmアーキテクチャを基盤とした製品が今後の市場競争力を支えると見込んでおり、この契約終了が同社の長期戦略に打撃を与える懸念もある。さらに、業界全体にも波紋が広がる恐れがあり、多くのメーカーがアームとの関係や今後の技術選択について再考を余儀なくされる可能性がある。これにより、半導体業界の勢力図にも影響が及ぶ可能性があり、今後の展開が注目されている。