Intelが最新のCPUシリーズ「Core Ultra 9 285K」と「Core Ultra 5 245K」を発表した。これらのCPUは、新たに対応するLGA1851ソケットのZ890マザーボードが必要で、過去世代の製品とは互換性がない。新プラットフォームでは「Intel Application Performance Optimization(APO)」が導入されており、特定のアプリで最適化を実現する。

しかし、対応ゲームが少ないため、ゲーミングパフォーマンスは不安定とされている。Cinebenchでの計測では、Core Ultra 9が354W、Core Ultra 5が235Wの消費電力を記録。ゲーム目的では他製品が推奨されるが、マルチスレッド性能が求められるクリエイティブ用途では力を発揮する。

新しいZ890マザーボードが必須:LGA1851対応のインフラ整備

Core Ultraシリーズの導入には、従来のLGA1700ではなく、新規設計のLGA1851ソケットが必要となる。これに伴い、Intel Z890チップセットを搭載した新しいマザーボードが必須となるため、ユーザーは既存の環境をそのままアップグレードすることはできない。互換性の制約により、最新の技術を活用するには新規構築や大幅な改造が求められるのが特徴だ。

今回のプラットフォーム変更は、CPUの性能向上だけでなく、メモリやPCIeスロットの帯域拡大といった周辺環境の強化も視野に入れている。これにより、AI処理や高解像度映像のレンダリングなど、次世代の負荷の高いアプリケーションに対応可能になる。特にプロフェッショナル用途をターゲットにしている点が強調されており、単純なゲーミング性能よりもトータルのパフォーマンスを重視している。

Intel APOの導入とその影響:ゲームにおける課題

Intelは、プラットフォームの効率性を向上させるために「Application Performance Optimization(APO)」を導入した。APOは、Windowsのスケジューリングを補助し、アプリケーションごとのパフォーマンス最適化を行う技術だ。しかし、APOが有効になるのは限られたゲームのみであるため、現時点での対応タイトルの少なさが問題となっている。

多くのレビュアーからは、APOの恩恵を受けられるゲームでは性能が向上する一方、それ以外のゲームではかえって不安定さが目立つと指摘されている。このため、ゲーミング用途を主目的にするユーザーにとっては、APOの有効化がデメリットとなる可能性が高い。これにより、IntelはAMD製品や自社の旧世代CPUとの差別化に苦しむ状況にある。特にeスポーツやフレームレートを重視するユーザーにとっては、現時点でのCore Ultraシリーズは理想的な選択肢ではない。

消費電力と発熱:Cinebenchでの性能測定結果

Core Ultra 9 285KおよびCore Ultra 5 245Kは、高性能なマルチスレッド処理を実現するが、その代償として消費電力と発熱が大きいことが判明した。FPS ReviewによるCinebenchでの計測では、Core Ultra 9が354Wの電力を消費し、CPU温度は86℃に達した。一方、Core Ultra 5は235Wを消費し、69℃で動作することが確認された。

これらの結果から、最新のIntel CPUは、電力供給と冷却性能の確保が重要な要素となることが分かる。特に高負荷の処理を行う場合、安定した電力供給と効果的な冷却がなければ、長時間の使用においてパフォーマンス低下やシステム障害のリスクが高まる。したがって、これらのCPUを活用するためには、専用の冷却システムを導入するか、電源ユニットの強化を行う必要がある。

ゲーマーはAMDや旧モデルが有利?コンテンツ制作用途には強み

Core Ultra 9 285KとCore Ultra 5 245Kは、ゲームよりもプロフェッショナル用途に焦点を当てたCPUである。レビューによれば、これらのCPUはシングルスレッド性能が限定的であり、高負荷時のクロック周波数も安定しないことから、ゲーミング体験においては一貫性に欠けるとされている。そのため、専らゲーム用途のユーザーには、AMDのRyzenシリーズやIntelの旧モデルの方が適している。

一方、これらのCPUはマルチスレッド処理を得意としており、特に動画編集や3Dレンダリング、コンテンツ制作などの用途では真価を発揮する。多くのスレッドを同時に扱えるため、複雑なプロジェクトやバッチ処理など、高い並列処理能力を要求する作業において優れたパフォーマンスを提供する。これにより、クリエイターや開発者にとっては、最新のCore Ultraシリーズは魅力的な選択肢となるだろう。