Intelの新世代CPU「Lunar Lake」を搭載したASUS Zenbook S 14のLinux性能が、ASUSのパフォーマンス技術(AIPT)の適用で22%向上した。従来の「ウィスパーモード」では抑えられていたCPUの性能が標準モードで解放され、競合モデルであるAMD Strix Pointシリーズに迫る改善が確認された。

400以上のベンチマークによる検証では、性能向上に加えて消費電力も改善が見られた。ただし、最新のAMDモデルに比べると、依然として効率の面で差があることも浮き彫りになっている。

ASUS AIPTパッチ適用で性能が大幅向上

ASUSのAIPT(Intelligent Performance Technology)により、ASUS Zenbook S 14での「Lunar Lake」CPUの性能が大幅に向上した。当初のベンチマークでは、ウィスパーモードの影響でCPUの潜在力が十分に発揮されていなかったが、標準モードに戻したことで22%もの性能改善が達成された。

今回のパッチはIntelのLinuxエンジニアによって提供され、同じテスト環境で再検証された結果、性能がMeteor Lake世代を超えるまでに向上したことが確認された。ただし、今回の改善に伴い、消費電力も増加している。平均消費電力は以前の11.8Wから19.8Wへ、ピーク時には37Wに達した。このような増加は標準モードの稼働に伴うものであるが、最新CPUとして許容範囲に収まっている。

Lunar Lakeと他のIntel/AMD CPUとの比較

Lunar Lakeは、今回の改善でIntelの他世代CPUとの比較で優位性を示した。テストに使用されたZenbookは、Alder Lake、Meteor Lakeと比較され、全体的なパフォーマンスの平均値でMeteor Lakeをわずかに上回った。ただし、AMDのStrix Pointシリーズと比べると依然として性能面での差が見られ、特にRyzen AI 9 HX 370がLinux環境において優れた効率性を示した。

今回の結果では、Lunar Lakeが他のIntel CPUと比較しても、省エネ性能でメリットがあることが浮かび上がった。これまでのAlder LakeやTiger Lake世代のCPUに比べ、長期的なアップグレードとしては有力な選択肢となり得る。ただし、Linux環境下でのAMD製品のパフォーマンス優位は、クリエイターや開発者にとって依然として魅力的な選択肢である。

高性能トランジスタと周波数向上がカギ

Guru3Dによると、Arc 140Tの性能向上の一因には、高性能トランジスタの採用がある可能性が指摘されている。これにより、従来モデルに比べて動作周波数を引き上げることが可能になり、よりスムーズな処理が期待できる。また、周波数の向上は特に負荷の高いグラフィックス処理において効果を発揮するため、ゲーミング用途やクリエイティブな作業においても高いパフォーマンスを発揮することが見込まれる。

Intelはこの技術革新によって、消費電力とパフォーマンスのバランスを最適化しつつ、競争力のある製品を提供しようとしている。こうしたトランジスタ技術の進歩が、今後のモバイルGPUの市場における競争を激化させる可能性がある。

今後のモバイル向けiGPU市場に及ぼす影響

Arc 140Tの登場は、モバイル向けiGPU市場においてIntelの存在感を一層強化するだろう。NVIDIAやAMDとの競争が激化する中で、Intelは自社のGPU性能を大幅に向上させ、ユーザーにとって魅力的な選択肢を提供することが狙いとされる。また、140Tの性能は単なるベンチマーク上の結果に留まらず、実際のユーザーエクスペリエンスにも影響を及ぼすだろう。

特にゲーミング市場やクリエイティブ向け市場での需要が高まることが予想され、Intelはこれらの分野においてもシェア拡大を目指している。今後の市場展開次第では、iGPUの性能がモバイルデバイスの選定基準としてますます重視されるようになるだろう。IntelのArc 140Tは、その変化を牽引する製品となる可能性を秘めている。