韓国のAIスタートアップHyperAccelは、2024年1月にSoCおよびASIC設計を専門とするSEMIFIVEと提携し、新しい言語処理ユニット『Bertha』を開発した。GPUに代わる低コスト・低レイテンシの特徴を持つこのプロセッサは、2026年初頭に量産が予定されている。

Berthaは従来のスーパーコンピュータの2倍の性能と19倍のコスト効率を誇るが、市場には既にNVIDIAのGPUが深く根付いており、競争は熾烈だ。特に、シリコンバレーのGroqが展開する高速AI推論向けLPUは、既に50万人を超える開発者からの支持を集めている。こうした市場環境の中、HyperAccelはBerthaの効率性を武器に企業のコスト削減ニーズを狙うが、NVIDIAの圧倒的な支配を崩すことができるかが注目される。

HyperAccelとSEMIFIVE、AI市場に向けた『Bertha』プロセッサを共同開発

韓国のAIスタートアップであるHyperAccelは、SoCおよびASIC設計の専門企業SEMIFIVEと協力し、新しい言語処理ユニット(LPU)『Bertha』の開発に成功した。両社はAI市場におけるGPU依存を打破することを目指し、2024年1月から共同開発を進めてきた。このプロセッサは、特に大規模言語モデル(LLM)の推論処理を強化するために設計されている。

『Bertha』は、最先端の4nm技術を採用し、高いパフォーマンスとコスト効率を両立している。GPUプラットフォームの高コストと低効率に対する解決策として、このプロセッサの登場はAI業界で注目を集めている。量産開始は2026年初頭を予定しており、HyperAccelはその供給網を拡大していく計画である。SEMIFIVEのCEOであるBrandon Choは、「AI市場におけるLLMの計算需要が急増する中で、HyperAccelは新しいグローバルプロセッサインフラを牽引する存在となる可能性を秘めている」と期待を示している。

GPUの高コスト・低効率を克服するLPU技術の展望

『Bertha』は、従来のスーパーコンピュータの2倍の性能と、19倍のコスト効率を実現することが特徴である。HyperAccelはこのプロセッサにより、データセンターの運用コストを大幅に削減できるとしており、AIの商業利用が拡大する中で新たな競争力を狙っている。このLPU技術は、GPUプラットフォームの高コスト構造を改善し、より効率的で手頃な選択肢を提供することを目指している。

AI推論処理が求められる分野において、パフォーマンスを維持しながらもコストを抑えることは、企業の競争力向上につながる要因となる。ただし、NVIDIAのような既存プレイヤーが市場を支配する中、『Bertha』のような新しい技術が主流となるには、供給網の構築と業界からの信頼を獲得する必要がある。HyperAccelは効率重視のアプローチを武器に、AI市場での地位確立を目指している。

Groqの成功と『Bertha』の市場参入の遅れがもたらす課題

Groqは、元GoogleエンジニアのJonathan Rossが率いる企業であり、既にLPU(言語処理ユニット)市場で存在感を示している。同社の高速AI推論向けLPUは、2024年2月の発売以来、50万人を超える開発者によって利用されている。こうした実績は、新規参入する『Bertha』にとって大きな壁となる。GroqのLPUは、クラウドおよびオンプレミス環境での大規模なAI推論に対応しており、その性能と速度が評価されている。

一方、HyperAccelの『Bertha』は、効率性とコストパフォーマンスを武器に市場参入を目指すが、開発段階から市場投入までの遅れが影響を与える可能性が高い。AI市場は急速に進化しており、タイムリーな投入が成功の鍵となる。量産が2026年初頭とされる『Bertha』が市場でシェアを確保するには、NVIDIAやGroqなど既存の競合と差別化した価値を提示することが求められる。

NVIDIA支配の市場で新たな競争の幕開け

NVIDIAは、AIプロセッサ市場で圧倒的な支配力を持ち、GPUの高性能を武器に市場を席巻している。データセンターからクラウドプラットフォームに至るまで、NVIDIAの製品はAI技術の基盤として幅広く採用されている。HyperAccelとGroqが提案するLPUは、この巨大な市場で新たな可能性を探る挑戦である。しかし、NVIDIAの市場シェアを崩すことは容易ではなく、新規参入者は特定のニッチ市場をターゲットとする戦略が必要とされる。

『Bertha』は、コスト削減を重視する企業をターゲットとし、より効率的なAI推論の提供を狙っているが、市場の支配構造を揺るがすには時間がかかるだろう。今後、AI市場が成長を続ける中、複数の競合が共存するエコシステムの形成が予想される。NVIDIAに対抗する新しいプロセッサの登場は、市場の多様性を促進し、企業の選択肢を増やすことに寄与する可能性がある。